書籍紹介『世界のグローバルリーダーが使いこなす 交渉の秘訣』

アライアンス

欧米型の交渉術についてまとめられた本です。

部下がアライアンス候補先と商談する際に、下記のような課題があって、交渉術に関する本を探しました。

・先にこちらが提示できる条件を話してしまう
・交渉の着地点を想定せずに商談を進めてしまう
・交渉のパターンを複数想定できていない

交渉術の説明、実際の利用シーン、その交渉術を仕掛けられたときの対応、といった形でまとめられているので、自分の立場に置き換えてイメージしやすいと思います。

また、交渉術が幅広く紹介されているので、どんな交渉パターンがあるのかを理解するのにも役立ちます。

こんな人におすすめ
  • 営業で、なかなかこちらの提案が通らない
  • 部署間の調整で思うようにこちらの要望を受け入れてもらえない
  • 他社との交渉で先方の要望を通されがち
  • そもそもどんな交渉術があるかの知識がない
本の目次

序章  交渉を制すものがグローバルビジネスを制す
第1章 グローバル社会で戦うための準備
第2章 欧米人が最もよく使う交渉術
第3章 欧米人が使う強硬的な交渉術
第4章 日本人も欧米人も使いやすい交渉術
第5章 日本人も使いやすい交渉術

交渉前に押さえておきたい基礎知識

本の中では『6つのパラダイム』『論理展開の三角ロジック』が交渉前に押さえておきたい基礎知識として紹介されていますが、本書では交渉術として紹介されている『BATNA』も知っておいたほうが良い基礎知識だと思いましたので、この3つをご紹介します。

6つのパラダイム

6つのパラダイムとは『7つの習慣』で紹介されて一般的に広まった、人間関係におけるパラダイム(物の見方や考え方)です。

7つの習慣で紹介されている人間関係におけるパラダイムは以下の6つです。

6つのパラダイム

Win-Win  自分も勝ち、相手も勝つ

Win-Lose  自分が勝ち、相手は負ける

Lose-Win  自分が負けて、相手が勝つ

Lose-Lose 自分も負けて、相手も負ける

Win    自分が勝つ

Win-Win or No Deal 自分も勝ち、相手も勝つ、それが無理なら取引しない

交渉術の中でもどこを目指して交渉するのか、といった考え方が必要になります。

論理展開の三角ロジック

三角ロジックとは論理的思考の基礎となる考え方のひとつです。相手に説得力を与える話し方をするために「主張→証拠(データ)→論拠(理由づけ)」 の3つの順に説明します。

プレゼンや自分の考え、主張を伝える時に三角ロジックに則って話せば論理的な考え方や伝え方ができるので相手を説得しやすくなります。

BATNA

BATNAは本書のなかでは交渉術の一つとして紹介されています。

BATNAとはBest Alternative To Negotiate Agreementのイニシャルを取ったもので「交渉が成立しない場合に備えて考えておく最良の代替案」という意味です。

欧米では交渉の前にいくつかのパターンをロジックツリーを用いてシュミレーションするそうで、「A案が上手くいかなかった場合はB案、B案が上手くいかなかった場合はC案に移る」など事前に具体的な対策を想定します。

冒頭に書いたように、交渉に入る際に複数の商談パターンを想定できていない人が多く「相手がAって言ってきたらどうする」「Bは?Cは?」という会話をよくします。

交渉は相手の選択肢とこちらの選択肢がかみ合う妥結点を探る、すり合わせる場なので、相手のBATNAは何だろう、こちらの用意できるBATNAは何だろうと考えておけると、交渉を進めやすくなると思います。


以下、各章で紹介されている交渉術の名称と概要だけご紹介します。より詳しく知識習得したい方はぜひ本で確認してみてください。

欧米人が最もよく使う交渉術

Snow Job

「言葉巧みに人を騙す」「口車に乗せる」「言いくるめる」「たくみに売り込む」「 巧みな嘘」という意味です。とにかく混乱させ注意をそらすことを目的とした交渉です。具体的には、多くの情報を与えその事実や数字で相手を圧倒します。

Highbaal / Lowball

非常に古典的な交渉術の一つでアメリカ人が最もよく使う交渉です。特に値段交渉の場でよく使われます。少しでも高く売りたい売り手は高い金額を提示し、少しでも安く買いたい書い手は低い金額を提示する、このやり取りをボールに例えています。

Bogey

本来重要でないことを重要であるかのように見せかけることで本来の目的を果たす交渉術です。

欧米人が使う強硬的な交渉術

Brinkmanship

衝突も辞さないという強硬的な姿勢をとることによって相手の情報を引き出す交渉術です。特に衝突した際のデメリットを相手に伝えることでそのデメリットを取るくらいならここで妥協した方が良いと相手を誘導するのが特徴です。

Chicken

ビジネスの交渉で脅しを使って互いにぎりぎりまで譲歩しない形で行われる交渉術をChickenと呼びます。 典型的なWin-lose型の交渉です。

Time Pressure

時間的な制約を利用して交渉を有利に進める方法です。

Good Guy / Bad Guy

良い人役と悪い人役を事前に決めておき、悪い人役が高圧的で圧迫的な言動をとり、良い人役がそれをなだめることで交渉相手を揺さぶり有利に進める手法です。

日本人も欧米人も使いやすい交渉術

The Niddle

要望を少しずつ伝えていき最終的に大きな要望を得る交渉術です。この交渉術は交渉の終盤で使うのが効果的です。

Deadlines

自信の交渉の条件を交渉相手にきちんと提示した後、期限を切ることで緊張感や切迫感を出し、相手の条件や欲しい条件を引き出すという戦略です。

Defense in Depth

元々は戦闘教義のひとつで、戦いの際に何重にも陣をひいて段階的に敵の攻撃力を削ぎ、最後は相手を包囲して攻撃する防御のための戦略のことを指していました。つまり敵の前進を防ぐのではなく遅らせることで敵を疲弊させることを目的としています。

日本人も使いやすい交渉術

Mirroring

相手の言動や仕草などをミラーのように真似ることにより相手に親近感を持たせたり好感を抱かせたりする心理テクニックです。

Flinch

たじろぎ戦術と呼ばれます。最初に相手に給与や金額などの数字を言わせ、その後その数字を復唱しながらポーズや驚きショックなどの表現を入れることで相手に心理的プレッシャーを与えるという交渉における心理作戦です。


交渉の技術を習得し、営業やアライアンス、社内での調整などに活用しましょう。